HABIT

習慣を身につければ世の中の大体の事はうまくいく

十分な時間とお金をかけてショックを与えたら自分の本当の意志が見えてきた

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一に仕事で、二に睡眠

人生を振り返る。まず、何よりも仕事を最優先に考えて生きてきた。そして、その仕事のパフォーマンスを維持するために、睡眠時間を確保するように心掛けた。当然、遅刻も欠勤もしなかった。数字の成果もそれなりに示せる優秀な社員だったと自負している。(自負るのは本人の勝手)

  

三四がなくて、五にギャンブル

だが、仕事と睡眠時間以外はすべてギャンブルに充てていた。なぜか、何もしていないと時間を無駄にしているという感覚があった。当然、ギャンブル以外にもいくらでも健全な趣味はある。それでも、ギャンブルを優先していた最大の理由は「常にお金が出入りする」からだった。この感覚は仕事においても同様で、お金が動いてる時は謎の安心感に満たされていた。社会人一年生から「空き時間のギャンブル」が習慣化していた。 

 

三冠達成

先日、訳あって仕事を辞めた。そして、ついに【中年】【未婚】【無職】の三冠を達成した。(もちろん彼女もいない)これをピンチと考えるか、チャンスと考えるかは人それぞれだろう。ちなみに貯金は250万円。

この状況、考え方次第では日本の35歳における最長自由時間保持者という事にはならないか。トップだ。王だ。いや、神だ。何物にも邪魔されない完全なる自由を私は手に入れたのだ。何をしてやろう。そうだ、ギャンブルをしよう。きっとこの状況はギャンブルをすべきなのだ。ガハハ...。

 

実験開始

半ばヤケクソの領域を遥かに超越した中年の決意は、ただの自暴自棄のようにも見える。しかし、これは彼なりに考えた一種の荒療治なのだ。今、ここで自身におけるギャンブルのポジショニングを正確に把握出来ない事は死をも意味する。わずかに残された本能で、迫りくる身の危険をかろうじて感じ取っていたのだ。

 

「自分は好きでギャンブルをやっていたのか?」

「これから先の人生もギャンブルを続けていくのか?」

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セミリタイア疑似体験

そして、とうとうギャンブルオンリーの生活が始まった。仕事もない。家族もいない。賃貸アパートに一人暮らしの未婚の中年野郎の行く末を心配してくれるのは遠く離れた田舎の両親だけだ。それでも、彼は戦う。そこに希望がある限り。

...いや、まてよ。これは世間でいうところの、セミリタイア疑似体験とも言えるのではないか。プチセレブというやつなのか。そうか。そうなのか。そうに違いない。グァハハハッ!

背中を向け、握りしめた拳を振り上げると聖戦士はいつ終わるかも分からない過酷な戦場(パチンコ店)へと旅立っていった。

 

預金残高100万円

気付くと、三か月が経っていた。ガクガクと震えるその手には印字したばかりの通帳が握られている。「お預かり金額」の記載は【100万円】。三か月前には間違いなく250万円だった。あまりのショックに鎖骨のあたりから地面に崩れ落ちそうになっていた。

 

他にも色々あったもん

実際は、家賃や生活費、区民税や年金等の支払いもあった。そうだ、食費も含めれば、ギャンブルの負け額は90万円ほどだ。「なんだ90万円かぁ。」と、この世のものとは思えない程、無残な負け惜しみを吐き捨てると中年はようやく夢の国から舞い戻った。しかし、それも束の間、電卓すら使わせてくれない「三か月で90万負け」というキリの良い数字が激しく全身に襲いかかってくる。「毎日必ず1万円負ける」という偉業を達成したときに与えられるもの。それは衝撃だ。ショッキングではなくショックそのものだ。いわゆる衝撃の核みたいなものだ。しかし、このショックとやらはのど元を過ぎて肛門の辺りまでくるとリアクションが取れないみたいである。

「ふーん」

何が「ふーん」なのか。とうとう気がふれてしまったみたいだ。

 

覚醒の時

放心状態から解き放たれると、今起きている現実をゆっくりと把握した。さらに、90万円という負け額を奥歯の奥の奥で2時間ほど噛み続けてみたが、跡形もなく消え去るというような事は断じてなかった。しかし、不思議とその負けを取り返そうという考えには至らなかった。そう。人智の理解を超える衝撃は、人一人の思考回路を破壊するのには十分過ぎるエントロピーを兼ね備えていたのだ。ここに一人の男が覚醒した。ようやく気がついたのだ。自分はギャンブルに夢中になっていたわけではない。ただ、人生の空き時間を適当に埋める方法としてギャンブルを選択していただけに過ぎなかったのだ。

 

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